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レポート

第26回がんコンベンション

2021年、日本の食はどうなる? 遺伝子組み換え食品を見逃すな!

2020年11月、京都と東京で行われた「第26回統合療法日本がんコンベンション」で、元農林水産大臣の山田正彦先生の発表が注目を集めました。同年11月国会で可決した「種苗法改定」をもとに、日本の食の安全がどのような状況にあるかを知って欲しいと多くの人に呼び掛けました。今回は、食の安全について考えてみたいと思います。

1人の母親がアメリカの食を変えた

突然ですが、マムズ・アクロス・アメリカ(MAA)という名前をご存知でしょうか? 「遺伝子組み換え食品から子どもたちを守ろう」と全米各地で立ち上がった母親たちで構成された市民団体です。
今では150万人規模の巨大組織となり、現在でも活動を続けています。この組織を立ち上げたのは、ゼン・ハニーカットさんという女性でした。彼女はなぜ、そんな組織を立ち上げたのでしょうか?
ゼンさんには、3人の子どもがいました。3人とも男で、うち2人は以前から乳製品や卵、ナッツ類にアレルギーがあり、アナフィラキシーショックなどを引き起こして生死の境を彷徨った体験から、ゼンさんは、様々な手段で子どもたちの食べ物について調べました。
すると、アメリカで流通する加工食品の85%に「遺伝子組み換え食品」が含まれている事実を知って愕然としたそうです。

小麦製品を食べた子どもの腸内細菌

当時、次男は理由もなく突然怒り出す、騒ぎ出すという症状があったため、ゼンさんは、自分自身と子どもたちの尿検査を行いました。
その結果、さらに驚くべきことがわかったのです。なんと、次男の尿から除草剤ラウンドアップの主成分である「グリホサート」が、ヨーロッパの環境保護団体が行った同じ検査における最大値の4倍以上も検出されたのです。
なぜ次男だけに、グリホサートが検出されたのでしょうか? 考えられるのは、長男と三男には小麦アレルギーがあり、パンやパスタなどを食べさせていなかったことでした。
ゼンさんはグリホサートとの因果関係を疑い、すぐに病院で腸内細菌を調べました。すると次男は、リーキーガット症候群を発症しており、クロストリジウムという悪玉菌が、ヨーロッパの基準値のなんと8倍もあったのです。
その後、小麦製品を断ち、毎日の食事は有機栽培で育てられたオーガニック食品に厳選し、発酵食品などを積極的に摂るようにしました。すると、わずか6週間で次男の健康状態は改善されました。

人体に残留する除草剤の成分

その頃、アメリカでは小麦の収穫前にモンサント社の除草剤であるラウンドアップを撒いていました。ラウンドアップを撒くと一斉に枯れるのでコンバインの手間が要らないからです。
モンサント社はグリホサートを摂取してもその日のうちに尿から排出され、体内に残留することはないとする研究結果を公表し、アメリカ環境保護局(EPA)の認可を得ていると主張していました。
この事に矛盾を感じたゼンさんは、マムズ・アクロス・アメリカに参加した母親たちとともに様々な方法でグリホサートが人体に残留することを証明し、1万人を超える母親たちがグリホサートのリコールを求めて、EPAの電話を鳴らし続けました。
その結果、EPAとの面談が設けられ、リコールまでは実現しなかったものの、15年間の延長を目前に控えていたグリホサートの認可更新を止める事に成功したのです。

全米中のスーパーを訪ね歩く

ゼンさんは、その後も行動を続けました。遺伝子組み換え食品を排除し、オーガニック食品を増やすにはまず、オーガニック食品の需要と、遺伝子組み換え食品を受け入れないことを販売者側に気付いてもらうことが必要だと考えます。
そのために、実際にオーガニック食品の売り上げを伸ばさなければ市場は変わらないと考えて、全米中のスーパーをキャンピングカーで1軒1軒巡り、オーガニック食品や非遺伝子組み換え食品を販売するようお願いして歩いたそうです。
一方で、マムズ・アクロス・アメリカの会員に「毎月100ドルのオーガニック食品を購入しよう!」と呼び掛けたのです。
今では、遺伝子組み換え食品はアメリカ国民に受け入れられなくなり、栽培面積も年々減少傾向にあります。子どもを守りたい母親の思いが国を動かし、スーパーに大きなオーガニックコーナーが設けられ、消費者が食べ物の安全性を把握できるようにNon GMO(非遺伝子組み換え)を証明するマークや有機認証マークの入った食品ばかりが並ぶようになりました。

日本は遺伝子組み換え食品の承認大国

元農林水産大臣の山田雅彦先生は、アメリカのこうした動きを例に、「日本は逆行している」と指摘しました。種苗法の改正によって今、自国で売れなくなった遺伝子組み換え食品の引き取り先として、日本の存在が取り沙汰されています。
この法改正によって海外の種苗会社が製造した、遺伝子組み換えの種子が日本に入ってくる可能性が高まるのではないかと考えられています。2023年からは「遺伝子組み換えでない」という表示が事実上できないようになってしまう、と言う指摘もあります。
現在、世界の49か国は除草剤ラウンドアップの使用を禁止しています。しかし山田先生は「日本はグリホサートの残留農薬基準を400倍にまで引き上げた」と危惧します。すでに遺伝子組み換え食品の承認大国になっていて「大手3社の小麦粉からグリホサートが検出された」ことを明らかにしています。埼玉県以外の学校給食からもグリホサートが検出されています。

世界は、有機栽培の需要が増えている

世界を見渡すと、フランスとイタリア、ブラジル、台湾などで学校給食をオーガニック食材にする取り組みが始まっています。お隣りの韓国では、小中高校でオーガニック給食が無償で提供されています。
日本では、世田谷区の母親たちが立ち上げた「世田谷区の学校給食を有機無農薬食材にする会」を中心として子どもたちの給食を、オーガニック食材に切り替えようと署名活動をスタートさせました。
世界は、どんどん有機栽培の需要が増え、子どもたちに質の良い食事を提供するための取り組みがされています。多くの人に自分たちが食べるものの安全性について考えていただき、これからこの日本で長い人生を歩んでいく子どもたちのために、私たち一人ひとりが考えなくてはならないと感じます。
2021年は、コロナ禍や感染症への防止対策とともに、ぜひ食の安全を考える機会になることを願っています。

※今回の内容は、第26回統合療法日本がんコンベンションの山田正彦先生の講演内容と、同じく山田正彦先生の著書「売り渡される食の安全」から一部抜粋しています。

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