予防と治療の組み合わせ
今回のコンベンションに集結いただいた講師陣は、いずれもがん治療には標準治療だけではなく、様々な治療法や対策があるとの考え方に立っています。
講演のトップを切った西脇俊二先生は、副作用がほとんどないことで注目されているIPT(インシュリン・ポテンシャル・セラピー)療法について紹介しました。がんが、ブドウ糖を好む性質を利用した療法で、インシュリンを使用して血糖値が下がった所に少量の抗がん剤とブドウ糖を点滴することで、がんを縮小させるものです。西脇先生は「がん細胞に集中的に抗がん剤を送り込む画期的な治療法」として症例を交えながら解説しました。
がん予防の観点から「消化力」の重要性にも言及し「消化力が低下すると未消化物が蓄積し、栄養が吸収されにくくなり、結果的に体調不良や疾患を引き起こしやすい」として、消化力を高める食べ方、消化しやすい食材の重要性も強調しました。
今回初登壇となったのは、医療法人医新会よろずクリニック理事長の萬憲彰先生です。萬先生は「がん細胞は免疫に認識されないように、がん抗原を隠している」との認識を示し「免疫細胞が、がんを認識できるようにすることが、がん治療で重要」だと訴えます。そのために有効な治療法として、低容量抗がん剤や放射線治療、光がん免疫治療、温熱療法などを紹介し、「代替医療だけではなく標準治療を組み合わせることで、治療の成果が出やすい」とアピールしました。
アルカリ化食と幹細胞
一方、食事を「アルカリ化食」にする重要性を説いたのは、からすま和田クリニック院長の和田洋巳先生です。和田先生は、かねてから「がん患者は高脂肪食・高タンパク食・乳製品・牛乳を摂取するケースが多い」ことに警鐘を鳴らし、食事を「アルカリ化食」に変えることを推奨しています。
「アルカリ化食」によって身体の炎症を抑え、免疫力を上げ、さらに免疫系を壊さないなどに加え、「炎症を広げない範囲で緩やかに抗がん剤治療を行う」という方法で、改善が見込めることを明らかにしています。
ステージ3、ステージ4など難治性の高いがんについて有効な治療法を示したのは、白川太郎先生です。近年、がん細胞にも「幹細胞」があることが明らかになっており、今回の講演では、がんの増殖や転移の元となる「幹細胞」について解説しました。白川先生は「幹細胞が増える要因は体内の炎症反応にあり、抗がん剤は最も炎症を引き起こす原因」と力説します。その結果、幹細胞を集中的に攻撃することで増殖が抑えられる治療法として、幹細胞のアポトーシス(自滅)を促す「ヨウ素」と、炎症を引き起こす活性酸素を除去する「水素」を用いた治療を提案しました。
命を守るために…
最後に、がんコントロール協会の理事長 森山晃嗣が「がんになる食事、ならない食事」をテーマに、病気と栄養の関係に言及し、避けるべき食品を紹介しました。また、スティーブ・ジョブズが生前に残した健康の重要性を訴える「物理的なものは、再度見つけられる。でも一度でもなくしたら再度見つからないのが人生と命だ。自分自身と人を大切にしてほしい」とのメッセージに、会場は感動に包まれていました。
今回のコンベンションは、全ての講演内容に「そもそも、なぜがんになるのか?」という根本的なテーマが貫かれているのが特徴です。治療法は異なっていても、一人ひとりの患者に最善の治療を組み合わせて提案する統合療法は、新たながん治療の選択肢として注目されることでしょう。